カステッロ ディ カッキアーノ

1000年以上の歴史を持つ貴族「リカゾリ」

 キャンティを語るにあたって、外すことができないのがリカゾリ家。イタリア王国2代目首相で、キャンティの生みの親でもあるベッティーノ・リカゾリ男爵の直系の末裔が、当主ジョヴァンニ・リカゾリ・フィリドルフィ男爵。バローネ(男爵)の称号を持つ貴族である。カステッロ・ディ・カッキアーノはその名の通り、中世のお城をワイナリーとしている。当時ここはフィレンツェとシエナの国境線。どちらにも属さないリカゾリ家だが、2つの都市間の争いに幾度となく巻き込まれた。ジョヴァンニには弟のマルコ・アレッサンドロがいる。彼は1998年にカッキアーノから独立し、ロッカ・ディ・モンテグロッシというワイナリーを立ち上げた。カッキアーノは、1974年カステッロ・ディ・ブローリオ(バローネ・リカゾリ)から独立。ブローリオの当主フランチェスコ男爵は、ジョヴァンニの従兄にあたる。

《 当主のジョヴァンニ・リカゾリ・フィリドルフィ男爵》

スタンダードのキャンティ・クラッシコこそ我が誇り

 1990年代、この地域はイタリアの他の地域と同じく、ブルゴーニュ志向の潮流に乗っていた。つまりは、畑名を名乗って付加価値のあるワインを造り出す事である。畑もワインの個性も細分化され、イタリアの多様性も重なった事から、世界中でイタリアワインブームが起き、スーパー・トスカーナが誕生した頃である。最高品質の葡萄がキャンティに使われず、スーパー・トスカーナに用いられている姿を見て、自ら立ち止まったという。これではキャンティ・クラッシコの品質向上は望めない。最高のサンジョヴェーゼは、自分たちの誇りであるキャンティ・クラッシコに使用するべきだと。1996年を境に、スーパー・トスカーナの製造を中止。カステッロ・ディ・カッキアーノの名前を冠した、キャンティ・クラッシコに力を注ぐようになった。彼らにとって、キャンティ・クラッシコこそが最高品質たるべき看板ワインであり、誇りなのである。

《収穫直前のサンジョヴェーゼが実る畑》

キャンティ・クラッシコの更なる磨き上げ

 カッキアーノはコロナの渦中でも、攻めの姿勢を崩さない。新たなプロジェクトとして、2023年までの間に、12haの畑を開墾し、サンジョヴェーゼとカナイオーロ、プニテッロ(サンジョヴェーゼの1つ)を新たに植える。それはスタンダードのキャンティ・クラッシコの品質安定、向上の為だと言う。現在、トータル10万本を生産しているが、将来的に15万本まで増やすそうだ。どんな時でも己を磨く。さすが武家貴族だ。

《開墾中の新しい畑》

キャンティ・クラッシコを逸脱した長期熟成

 カッキアーノのフラッグシップである、キャンティ・クラッシコはDOCGの規定を遥に上回る長期熟成の後にリリースされる。通常は12ヶ月の法定熟成期間だが、彼らは45ヶ月もの間、大樽にて熟成を施す。リゼルヴァでも24ヶ月、グラン・セレツィオーネでも30ヶ月の法定熟成期間である事を考えれば、異常である事が伺える。 また葡萄品種にも拘り、土着品種のみを使用。1999年まではメルロをブレンドしていたが、現在は使用しない。カナイオーロ(円やかさ)、マルヴァジア・ネラ(華やかさ)、コロリーノ(色調)を用いている。

《見晴らしの良い丘にそびえるカッキアーノ城》